現役ステージデザイナーの『イベントの裏側教えます』

PROFILE
たけうち(Takeuchi)
男 1971年生まれ 大阪府出身
高校、大学、とバンド活動に没頭。
95年、在阪、某大道具会社入社。
3年の営業勤務をへて同社企画へ
移動。K-1、NOAH、新日本プロレス
真撃等のステージデザインを担当
(ん!? 格闘技ばっかりやん……)。

2005年11月30日

最終回「最高のステージとは?」

ステージとは何か?
「ステージとは聖と俗の境界中で繰り広げられる宴である。」
とエリアーデ(←著名な宗教哲学者)は言い…、言い…、
言ってません…。

何かこう、識者の格言的なものを命題にして、
論を推し進めようと思いましたが、僕には無理でしょう?
と自問自答し、「無理 だ・か・ら!」ともう一人の僕が
判断致しました。

なぜなら、「たけうち君の考える、最高のステージとは?」と
最終回にあたって初めて編集長から、何だか至極、抽象的な
物言いを要求する、有り難くも明確なお題を賜り、それに
答えるべく、ビシッとした、背筋のピンっと張った、
凛とした文章で「行くぞー!」と、気勢をあげていたのですが、
やっぱり、それは関西人のイカンところの能力以上の
ものを見せようとしてしまう性質が、自分の中に見えかくれ
していることに気付き、取り返しのつかないことになる前に、
さっぱりと、敗北宣言をした次第です。それが、それが、
潔い大人ってモンです!

しかし、「最高のステージ」ってなんでしょうねえ…。
うーん、うーん、ぐーう、ぐーう、と考えると、
「誰もが感動できる時空間」ってのが、それなんでしょうか…。
あんまり興味のないお客さんが観ても感動するし、
だけど、物凄く興味を持ってるコアなファンも感動するし、
演者であるアーティストやパフォーマーら本人も感動するし、
照明、音響、大道具らの裏方も、自分達の仕事を含めて、
実は感動しているし、ひねくれもののステージデザイナーも
ホントは感動しているような…、そこにいてる皆がカンドー!
してる時空間ってのが、「最高のステージ」じゃあないんで
しょうかねえ…。何だか青臭いものは残りますが…。

でも、僕の立場からすると、「誰もが感動できる時空間」が
「偶然の産物」であってはいけないと常々思っています。
いざ、幕が上がると、観客の興奮との相乗効果も手伝って、
色んな偶然が生まれるもんですが、僕らサイドは、
それらをひっくるめて、ステージをクリエイトできてなきゃ
いダメだあ、と思います。エンターテイメントを供給する側が
考え、創ったものの上にのっかった感動でなければ、
あんまし意味がない、と思いますし、供給する側の覚悟と
いうのは、そういったところにないとあかんのじゃないか、と
いつも思うようにしています。

で、それらのことを踏まえても、その場所にいる人皆が、
モーレツにカンドー!している、ってのが「最高のステージ」
の称号に相応しいステージなんじゃないかなあ…。
なかなか出来ることではないですし、その感動を数字で示せる
わけでもないので、判断も難しいのですが、そこがステージの
魅力でもあるのだろうと、かっこよく思ってる僕がここに
いてるわけです。

《あとがき的なもの》

第1回でも書いていますが、このコラムはまさしく「いきおい」
から始まったものでした。それも世の中で一番良くないとされる
「酒に酔ったいきおい」が出発点です。
匿名風なブログ形式のコラムとはいえ、業界歴10年ちょいの
鼻たれが何を語れるのかと、謙虚な考えも浮かびましたが、
「まあ、どうにかなるやろう」の楽観がまさって、30回も、
書くことが出来ました。それも、おつきあいして下さった方、
つまりはクリックして下さった方々がいてこそで、感謝です。

「イベントの裏側」と銘打っておきながら、あんまり「裏側」
じゃあなかったなあ、と反省もしています。でも、このコラムを
執筆して、ひとつ勉強できたこともあります。それは、公的に
物を書くということは「書けること」と「書けないこと」を
どうやって料理するか、ってことが重要なんだな、ということが
解ったことです。「もっと面白い話もあるけどなあ…」
「だけど、この部分を隠して書かれへんしなあ…」っていう
ところですね。

しかし、まあねえ、「裏側」を全部書いたら、夢も希望もあった
もんじゃないでしょう?と、リーサルウェポン的言い訳しつつ、
あとがき的なものとさせていただきます。
                         たけうち

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2005年11月11日

第29回「僕、実際にプロレスの味方です!」

今回はやけくそ的に、全面的に、全方向的に、プロレスのことを
書こうかなあ、というか、書きます!(キッパリ)
『私、プロレスの味方です』と、初めて大きな声でマスコミや
文壇に向かって、おっしゃったのは、作家の村松友視さんですが、
「僕、実際にプロレスの味方です!」と通る声で言いたいです。

先月も「プロレスリング NOAH」の大阪大会(大阪府立体育館)を
飾りに行ってきました。舞台進行演出まで首を突っ込んで
しまっている仕事ですが、選手登場シーンは「かなり良かった」
と、「世界を描けてる」んじゃあないのかと、恥ずかしながら、
文字どおりの自画自賛してしまっています。だってねえ、自分で
構成しておきながら、本番観てちょっと感動したりしてるんです
ものねえ、僕自身がね……僕は阿呆です。……いや、いいや、
いいんです!、「僕、実際にプロレスの味方です!」から…。

でも、格闘技やプロレスの演出や舞台装置の内容に関しては、
もう限界が近づいているし、出尽くしてしまった感は多分にして
あります。なぜなら、「選手がリングに上がれば さわれない 」
ので、「選手登場の際しか いらえない 」からです。
ステージからの登場シーンに関して言えば、根本的には、もう、
上から下りるか、下から上がるか、横から出るか、しかありま
せんからねえ。「SFチックに、瞬間移動で何時のまにかリング
上に選手が現れる」ってのを一度やってみたいんですが、
今の科学では無理ですわね。
(マリックさんあたりがどうにかしてくれないでしょうか…。)

つまりは、僕らが出来ることは、「会場を温める」ことなんで
すよね。もうそれに尽きるわけです。観客のボルテージを、
どこまで引き上げることができるか、観客が感情を爆発できる
ギリギリの状態にもっていくことができるか、っていうこと
なわけです。そしてリング上のレスラーに、大興奮寸前の空気を
バトンタッチする、っていうのが最大のポイントなわけです。
で、人気レスラーとか、名レスラーと呼ばれる選手は、その空気
のバトンを受取るのが非常に巧いんです。会場の空気感を感じる
能力に優れていて、それを肉体で表現できる選手が良い試合を
するような気がします。

全国民的格闘技観戦傾向の昨今、プロレス興行はかなり逆境に
立たされて久しいことは、ファンならずとも周知の事実でしょう。
PRIDE等に代表される総合格闘技やK-1等に代表される立ち技系
格闘技も、確かに熱いファイトを展開していますが、プロレス
だって負けずに、熱戦を繰り広げております。是非とも、一度、
と言わず二度三度、プロレス会場に足を運んでいただければ
なあと、切に思うわけです。

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2005年10月26日

第28回「学祭実行委員会と裏方」

今を去ること10年以上も前は、僕も一応の大学生をしてました。
生来のヒネクレ者なので、テニスサークルとか、
イベントサークル等という、男子と女子がキャアキャア
ワイワイゆうている、外から見てて楽しそうなオーラを
醸し出している団体等は、遠くで見遣りつつ、悪態をつきつつ、
(ホントのところはいっぺんでいいから、そんなサークル
に入ってみたかったなあ。爽やかなキャンパスライフを満喫!
みたいな行動をとってみたかったなあ。悔やまれるなあ…。)
同じ学科の野郎共とバンドを組んで、軽音サークルに
籍だけおいて「やっぱロックでしょ!」と活動しておりました。
(ちなみにその時のバンド名は「ドリルチンカーズ」
どれだけこだわってロックを演っていたとしても、
略して「ドリチン」じゃあ、モテルわけないよねえ…ぐう。)

そんな僕のショボイ、塩っぱい思い出話はあっちへおいて、
今からは学祭シーズンに突入なのであります。
と書き出したものの、告白すれば学祭を担当したことがない。
つまりそれは、書くネタがないという事実が今判明しました!

うーん、困った。
2週間ぶりの原稿がこれでは編集長が真っ赤になって
怒るだろうなあ…(…タコだけに…)。
仕方がないので、あっちにおいておいた僕の思い出話を
こっちに戻して語り始めようか、とも思いましたが
それではちっとも裏側でも何でもなくなるので、
担当している同僚の話や僕の持てる想像力を総動員して
学祭について綴ってみたいと思います。
(僕の想像力よ集合!って、それでいいのだろうか…)

裏方にとって学祭とは何か?
この命題に対しての答えは、
「学祭実行委員会の学生達との戦いである。」(たぶん)

学祭のコンサートはプロのアーティストが来る場合は、
確実に音響照明大道具ともにプロの裏方が赴くわけですが、
欠けてるチームがひとつあります。それは……「バイト」です。
普通のコンサートでは、僕ら裏方のお手伝いをしてくれる
アルバイト君らがおり、コンサートやイベントを専門に
しているので、勝手をよく理解しているし、バイトリーダーの
統率のもと、キビキビと能率よく動いてくれるのです。

しかしながら、(たぶん)予算がない為、学祭の場合は
「バイト」の分は、学祭実行委員会の学生君達が代わりとして
働いてくれるのです。が、しかし、しかしで、当然の成りゆき
として、彼、彼女らは何をどうやっていいのか全く
わかっていません。そうなると、こちらとしては手取り足取り
説明をし、安全を留意するよう叫び、バラバラの動きをまとめ、
そうしてるうちに、裏方らは疲労していくそうです。

学生からしてみれば、「何で俺らが命令されなあかんねん!」
ってところでしょうが、こちら側からすれば、どんな状況下に
おいても、プロの仕事を要求されるゆえ、「言わざるをえん!」
ってところなんですねえ。(おそらく)

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2005年10月11日

第27回「舞台屋さんと展示屋さん」

先日、某遊技機メーカーさんの商談内覧会の設営に行きました。
基本的には舞台屋さん、大道具屋さんの僕なのですが、
展示会や博覧会、内装業務など、空間に関するデザインなら
何でもしますし、しています。
(いいや、空間以外にも、ロゴもマークもするし、
Tシャツくらいなら衣服もするなあ、何でもするなあ…。
「早い!旨い!デザインならたけうち!へ」←意味なく宣伝。
ちょっと貧乏臭いかなあ…。)
毎度のことではあるのですが、現場に至るまで、
二転三転、四転五転と状況が変化し、それに引っ張られるように、
コロコロと転がらざるを得ない僕。まあ、僕は達磨っすから、
転がされても起き上がるわけで…、それが信条なわけで…。
(「転んでも起き上がる!デザインならたけうち!へ」←
意味わからんなあ…/笑)

今回はなじみの展示屋さん(工芸屋さん)とのコラボで
進んだ仕事でした。
展示屋さんっていうのは、展示会の会場やブース設営、
内装業などを主な生業にしているところで、
僕の所属する大道具製作会社とは少し気色が違います。
同じように「なぐり(トンカチ)」や「ノコ(ノコギリ)」で
トントン、キコキコする大工仕事が基本ですが、
仕込み方(設営の仕方)から、バラシ方(撤去の仕方)まで、
違うんです。(作業風景は見た感じいっしょなのですが…)

舞台仕事と展示仕事の根本的な差は、
「お客さんの目の近さ」なんです。
舞台の観客は最低でも1mは離れたところから、
そのセットや装飾を見ていますが、展示会の来場者は
下手すりゃ10cmのところで施工物や飾りを見ます。
つまり、舞台では「遠くて見えないところ」も、
展示ではお客さんに見えてしまうのです。

この差が全てと言っていいほど、仕事の差に影響しています。
目が近い分、大道具の造作より展示の造作の方が、
仕上げ等においてシビアで、繊細な仕事が要求されます。
まあ、簡単言うと、大道具仕事ではごまかして逃げるべき
ところを展示仕事は逃げれないと言うところでしょうか…。

しかし、展示仕事がシビアだからといって、
展示の感覚で舞台を飾ったとしても、絶対に迫力のある
舞台の絵にはなりません。
舞台の場合は、観客が離れて見ている分、細部よりも
舞台画面全体に絵を描くことを意識しなければならない
からです。

イベントにおける、同じような大工仕事に見えても、
色んな分野があるってことなんです。それぞれ専門には
専門の奥深さがあるなあ、ってことですね。デスデス。

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2005年09月27日

第26回「天然芝とグラウンドキーパー」

「ろっこーおろし~に~~!~~」
関西人であれば9割が歌える阪神球団の応援歌「六甲おろし」。
勿論、僕も歌えます。(2番は怪しいですが…。)
虎キチではありませんが、昔の弱さをよく知ってるので、
今の阪神の快進撃は結構うれしかったりするもんなんです。
この稿がアップされる頃には、関西の街は
歓喜に包まれてるやもしれません。(現段階でM3)
昔の阪神は、関西弁でいう“あかんたれ”集団やったと
思いますが、今は違います。
金本選手も、、赤星選手も、今岡選手も、矢野選手も、
皆ちゃんと仕事をするのです。
ちょっと仕事をキチンとしすぎて、
「かわいくない」というか、だから
「阪神らしくない」という意見もあろうとは思いますが、
岡田監督の「朗らかな顔」だけで、阪神は阪神なのです
(ちなみに著者は岡田監督にソックリです=編集部注)。

阪神球団のホームグラウンドは言わずとしれた甲子園球場。
蔦の絡まるあの概観だけで野球の殿堂という雰囲気を醸し出す、
高校球児の憧れの場所…甲子園。
そんな甲子園でも毎年コンサートが行われています。
そう、今年もありました、関西夏の風物詩とも言える
「TUBE」の甲子園ライブです。

行ったことがある人は、よくわかると思いますが、
外野側にビックなステージを組むわけです。
それは、つまり、あの外野の天然芝の上にどでかい施工物が
やってくるわけです。
天然芝というのは、ほんまもんの生き物ですから、
外気を遮断してしまうと、あっと言う間に枯れてしまいます。

驚愕なのは、グラウンドキーパーの方々の技術です。
我々も、この上なく慎重に、工夫を重ねて、
施工撤去をするのですが、どうしても、撤去後、
天然芝の所々が変色してしまったり、
元気がなかったりすることを避けられません。
しかし、撤去清掃後、グラウンドキーパーの方々が入り、
作業を始めると、言うが早いか天然芝は息を吹き返し、
見る見る回復して、プロ野球仕様のグラウンドに蘇るのです。
大袈裟ではなく、まるで魔法を見ている様なんです。

あの仕事っぷりは、ある意味、同じ裏方として
多大なリスペクトを送らずにはいられません。
そんな、多分日本一のグラウンドキーパーに支えられている
阪神タイガースはとても幸せな球団で、その分だけ、
ファンの声援に答えていかなければならない球団じゃあないか
と思います。

もう一息!がんばれ阪神タイガース!

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