#04
吉田豪さん

4/4

吉田
そんな感じでパンクはずっと好きで聴いてるんだけど、ただ、パンクに行き詰まりを感じた時期はあって。88年ぐらいでバンドブームが起きて、ブルーハーツの影響でビートパンクのバンドが増えて、パンクに同時代性がなくなってきたんだよね。海外でパンクが下火になってきて、水面下ではいろいろ面白いものもあったんだけど、ムーブメント的なものがなくなって、洋楽でも日本盤が出るのがトイドールズぐらいになって、それでもなぜか日本だけがバンドブームでパンク的なものが流行ってて。
へー。
吉田
そこに凄いモヤモヤしてたんだよね。悪い意味でのガラパゴス感というか、海外では絶滅しかけているモノを日本でだけずっとやってる感じというか。それでチンピラ感を求めてギャングスタ系のヒップホップを聴いてみたり、ライブに行ったりもしたんだけど。その頃に出てきたのがフリッパーズ・ギターだったんだよね。

Disc 09

『ヘッド博士の世界塔』
Flipper's Guitar

Amazon
はいはい。衝撃的やったもんなぁ。
吉田
それまでミニコミ以外だと『フールズメイト』ぐらいしか出てなかった人が『予備校ブギ』の主題歌だもんね。
「恋とマシンガン」!
吉田
「日本のバンドブームはおかしい」「カッコ悪いよ」ってことをハッキリ言って。「向こうじゃ誰もやってねえよ、そんなの」って感じで。チンピラ感はないけど口は悪くて、小沢健二とかいいとこの子っぽすぎて反発する気持ちはあるんだけど、でも何か引っ掛かって。
『紙プロ』時代、吉田さんとフリッパーズ・ギターの話をしたの覚えてるな。
吉田
大好きだったもん。ファースト、セカンドのネオアコ期も好きだけど、サードで当時の、それこそプライマル・スクリームとかマンチェスタームーブメントとかと連動したときに完全にやられて。フリッパーズは洋楽派としてもありだったんだよね。
確かこの『ヘッド博士の世界塔』は再発されてないんですよね?
吉田
そうなんだよね。サンプリングの問題でね。
だって、ヒドイもん、パクリ方が(笑)。
吉田
こんなの許可取れるわけないからね。そんなわけで同時代性が好きだから、フリッパーズが解散してからはコーネリアス派だったんだよね。むしろオザケン否定派だった。
なるほど。
吉田
ファースト聴いたときとかは凄いガッカリして。楽しみにしてシングルをまず買ったときに「あれ?」っていう。
小山田圭吾は小沢健二の最初のライヴを聴いて「尾崎豊みたい」って言ったんですよね。嫌なディスり方ですよねぇ(笑)。
吉田
そうそうそう。でも、その気持ちが凄いわかって。
わはははは。
吉田
のちに後悔するっていう(笑)。
なるほど、なるほど(笑)。あの時のオザケンは凄かったですもんねぇ。
吉田
急にバック・トゥ・ルーツに行くのが全然ピンと来なかったんだけど、その後、オザケンは8センチシングルも全部買った。「悔しいけれども」っていう(笑)。
僕も持ってます。このアルバムは最高ですよね。

Disc 10

『LIFE』
小沢健二

Amazon
吉田
でも、この時期の音楽性を否定するような流れを経て、ここ最近はまた活動を再開させて『ライフ』路線になってるけど、ライヴに行ったとき、なんかモヤモヤしたんだよねぇ。
僕も思いました。アレンジ変え過ぎ!
吉田
歌詞は変えるわ、MCは長いわ、電気は消すわで。
いまやるんだったら当時とおんなじことやってほしいのに、こっちは全然盛り上がれなかったですもん。
吉田
そこにプライドやこだわりがあるのはわかるんだけど、それは求めてないんだよね。
あれは残念やったなぁ。小沢健二の復活ライヴに関しては、「ガッカリした」とか「いや、あれがいいんだ」とかネットでも盛り上がりましたけど。
吉田
知り合いが批判的なつぶやきをしてたのをリツイートしたら、大変な騒ぎになったりしたね。ボクがリツイートしたせいで漫画家の押見修造先生も完全に怯えてた(笑)。
あ、もっとお話を伺いたいんですけど、会場の都合で時間がなさそうです。では最後の一枚にしてください!
吉田
えー! ハードコアの話とかもしたかったのに! じゃあ、最後はプロレスモノも1個ぐらい入れるとして。
なんでしょ?
吉田
安生洋二&高山善廣&山本喧一のゴールデンカップスのアルバムが意外と良くて。シュープリームス『恋はあせらず』や杉良太郎『君は人のために死ねるか』とかのカヴァーは入ってるし、テーマ曲は『紙プロ』編集部にもしょっちゅう遊びに来ていたカシオペアのなるちょ(鳴瀬喜博)参加だし、タイトルは『OH TACO』だしね(笑)。

Disc 11

『OH TACO』
ゴールデン・カップス

Amazon
お、僕のペンネームにも、そしてうちの会社の名前にも気を遣っていただいてありがとうございます!(笑)。
吉田
それで、いま見ると裏ジャケが完全にマキシマム・ザ・ホルモンなんだよね。

あ、ホンマや! ホルモンが真似したのかな? んなことないか(笑)。急かしちゃってすいませんでした。吉田さん、今日はお忙しいところありがとうございました!

(聞き手/メディアプルポ音楽出版部プロデューサー 原一博 構成/阿修羅チョロ )

目利きやTOP