番外編
谷川貞治さん

3/4

ダハハハハハ!それがきっかけで「僕と付き合ってください」となったわけですか?(笑)。
谷川
そうそうそう。そういうことなんだよ。
でもよく考えると、ベム、ベラ、ベロは妖怪じゃなくて、妖怪人間なんですけどね(笑)。
谷川
まぁそうなんだけどね(笑)。
妖怪人間が初恋のきっかけって人類で谷川さんだけですよ、きっと。
谷川
で、「なんか映画を観に行こう」ってなったら、『タクシードライバー』を観ることになってね。
あ~、そういうセンスの子なんですよね。
谷川
そういう難しそうな映画ばっか観るんだわ。俺は「寅さん観たいのになぁ」とか思いながらさぁ。
ダハハハハハ!
谷川
「『仁義なき戦い』が観たいのに」とかね(笑)。
ちょっとその彼女に理解してもらうのは難しいですよね(笑)。谷川さんって、ぶっちゃけた話、学生時分ってモテたんですか?
谷川
俺ね、普通にモテたね。
中学生の時は何もなかったんですか?
谷川
何もなかったね。好きな子はいたんだけど、恥ずかしがり屋で。僕らの世代って、なかなか声とかかけられなかったから。
でも「ベム!ベラ!ベロ!」では声をかけてみたと(笑)。
谷川
うん。でも中学校の頃は俺、ユーミンとか好きだったなぁ。あの頃の女の子たちにはユーミンが人気があった。まだ荒井由実の時代。だから、俺、ユーミンさんのラジオ番組に出させてもらった時はホントに嬉しかったなぁ。
なんかありましたねぇ。
谷川
ユーミンさんとは2~3回は共演してるはずだよ。ユーミンさん、格闘技大好きだからね。
そうなんですよね。ユーミンさん、一時期、めちゃくちゃハマってましたよね。角田(信朗)さんもユーミンのラジオに出てらっしゃいました。
谷川
じゃあ、ユーミンさんも入れなきゃだよな。
そうですね。
谷川
外すんだったらRCかな(笑)。
なんでですの!
谷川
いや、外せない外せない(笑)。だいたい青春時代っていうのはそんな感じなのよ。
はい。ちなみに、のちに会った方で言うと、矢沢永吉さんには会われてますよね?
谷川
永ちゃんは会った。『Dynamite!!』に出てもらったから。永ちゃんは嬉しかったなぁ。そのときに何言われたか知ってる?
いや、わかんないです。
谷川
「ヨロシク!」って一言だけ(笑)。
ダハハハハハ!
谷川
大阪ドームで会って、大会前に「今日はK‐1のためにありがとうございます!」って挨拶したら「ヨロシク!」って(笑)。
それだけ(笑)。その前に打ち合わせみたいなのはなかったんですか?
谷川
なかったね。社長さんとは何回もお会いしてたんだけどね。でも、本音を言うと、もっとノリノリの歌を歌ってほしかったんだけどね。
ですよねぇ。
谷川
わかるんだけどね。ファンが違うから永ちゃんも自信がなかったんだと思う。たぶん。
確かあの時はアコギ一本で歌いましたよね。僕、永ちゃん詳しくないんで、なんの曲かわからなかったんですが。
谷川
なんかペプシかなんかのCM曲のバラードバージョンを歌ったんだよね(筆者注・実際に歌われたのは「心花よ」。ときめきよ、と読む。サントリー缶コーヒー「BOSS」CMソング)。
僕も現場で観てましたけど、ちょっと微妙な雰囲気でしたよね。
谷川
だから、たとえば、(綾小路)翔さん、氣志團の。
はいはいはい。

谷川
DJ OZMAさんとかは格闘技の客層がわかってるから、これやればいいってポーンって当てはめられるの。でも、永ちゃんだったり、桑田さんだったり、まぁ桑田さんはプロレスファンではあるんだけど、客層が違うから、ちょっと躊躇するんだよね。「♪乗ってくれ Ha~Ha」とかやってほしかったんだけどね。
でも、格闘技のイベントに永ちゃん呼んだっていうのはいま考えても凄いですよ。
谷川
あと俺、AKB48とかも呼んでるんだよ。ももクロも呼んでるし。
凄いですよね。
谷川
でも最大のミュージシャンはスティーヴィー・ワンダー。
あ~、そうや!
谷川
スティーヴィー・ワンダーの話はタコちゃんに言ったっけ?
いや、聞いてないです。
谷川
スティービー・ワンダー事件って知ってる?
何か事件があったんですか?(笑)。
谷川
いやいや、メチャメチャ事件だったんだよ! 世紀の曙対ボブ・サップの時だよ。曙対サップをやるので、これは何か飾り付けをしなきゃいけないってことで、解説を貴乃花と柔道の古賀(稔彦)さん。あと藤原紀香と長谷川京子もいてね。で、ハワイの舞台でマイク・タイソンをスタンバイさせて。
凄いメンツですねぇ。格闘バブル。
谷川
で、アメリカ国歌を誰か外タレに歌ってもらおうと思って探してたの。そしたら偶然、スティーヴィー・ワンダーが日本に来てたの。
お~!
谷川
じゃあ、オファーしてみようと思って動いたら、スティーヴィー・ワンダーの呼び屋さんが「やってあげる」ってことになったの。
ラッキーや!
谷川
で、1万ドルか2万ドルで呼べるって話だったの。
そんなもんで呼べたんですか?
谷川
そう。それで「これは安い」と思って交渉したら、九州から名古屋まで来てくれると。で、スティーヴィー・ワンダーだったらリムジンがいいだろうと思って、わざわざ用意してね。
超VIPですからね。
谷川
そしたら、当日会場に来たらスティーヴィー・ワンダーが車から降りてこないと。
へ?
谷川
俺はずっと解説席にいたんだけどね。
もう大会始まってからですか?
谷川
そうなんだよ。
げーっ!
谷川
で、車に乗りながらドンドンドンドン、ギャラを釣り上げていくんだよ。
えっ、大会始まってから駆け引きが始まったんですか?
谷川
で、契約書にサインしてくれないと車から降りないとかごね出してね。
考えられへんなぁ!
谷川
だから俺も「じゃあ契約書、持って来い」って解説やりながらやり取りしてね。
「いまのローは効いてますよ」とか言いながらですか(笑)。
谷川
で、スタッフに「もうなんでもいいからサインしろ」って指示を出したんだよ。
「なんでもいいからサインしろ」なんて契約で絶対に言っちゃいけないセリフですよ!
谷川
で、解説席のうしろに英語が凄いよくわかるTBSの方がいて、契約書を読んで「谷川さん、7万ドルじゃないと出ないって書いてますよ」って言われてさぁ。
1万ドルだったのに!
谷川
「ここまで来たら、もう7万ドルでもなんでもいいですよ」って言ってサインしたの。
即断即決にもほどがある(笑)。
谷川
で、しばらくしたら「谷川さん、契約書を見たら歌わないって書いてますよ」って言われたの(笑)。
わははは!なにするために名古屋に来たんやと(笑)。
谷川
そうなんだよ。「え、じゃあ何をしに来てくれたの?」って感じで確認したら「ハーモニカ」って言われてね(笑)。
7万ドル払ってハーモニカ(笑)。
谷川
「それ話が違うじゃん!」とか思ったんだけど、「もうハーモニカでいいや」ってことになって。「スティーヴィー・ワンダーさんです」って出てもらったら、くるって回ってハーモニカを吹き出したんだけど、アレが本物だったか定かじゃないんだよね、いまだに(笑)。
そこらへんの色黒のおっさんかもしれませんよね(笑)。
谷川
まあでも、そのハーモニカがメチャクチャ感動的でよかったんだよ。
しかし、解説しながら、そんな交渉してたって凄い話ですよね(笑)。
谷川
さすがに「歌わないって書いてますよ」って言われた時は「何しに来たんだ、ヤツは!」って思ったけどね。
スティーヴィー・ワンダーさんの野郎って感じですか(笑)。
谷川
でもみんな感動してたからよかったかなって。
いや~、いまの話の方が感動しますよ(笑)。
谷川
「歌わないって言ってます」「誰か代わりに歌ってくれる人いないかな?」とか本番中に言ってたからね(笑)。
谷川さん、他人の十倍ぐらい生きてる感じですよね。
谷川
もうね、曙対サップの陰にはそういうことがいくつもあってね。もう大変だったんだから。
スティーヴィー・ワンダーのCDも挙げておいた方がいいんじゃないですか(笑)。
谷川
そうだね(笑)。で、俺はず~っと凄いと思って歌手で一番尊敬してるのは美空ひばりさんなんだよね。

Disc 06

『美空ひばりベスト0』
美空ひばり

Amazon
お~~~!
谷川
いま聴いてもカッコいい。
逆にひばりさんなんかは、もうちょっと大人になってから聴いたんじゃないんですか?
谷川
そうだね。特にCDとかになって音がよくなってから、その良さがますますわかるようになったからね。
そうですよねぇ。大人になってから僕もそう思いましたね。
谷川
東京ドームのコンサートも観に行ったんだけど、ホント命を懸けて歌ってるからね。あれは凄いわ!美空ひばりさん以上の歌手は見たことないわ。
ドームのコンサートに行かれたんですね。
谷川
行った。あれ以上のコンサートも観たことないなぁ。鬼気迫るといか、ホントに鳥肌が立ったというかさぁ。
へぇ~、そこまで感じましたか。
谷川
でもホント、美空ひばりはカッコいいよぉ。京都行ったら必ず美空ひばり記念館に行くからね。
そうなんですか?必ずは行ってないでしょ(笑)。
谷川
むぐぐ。まぁ必ずは行ってないけどさ(笑)。やっぱね、僕はスターが好きなんだよ。
でもファンからしたら谷川さんもちょっとしたスターですよね。
谷川
いやいやいや。僕なんかそんなんじゃないけど。
「サインしてください」とか言われると嬉しいもんですか?
谷川
やっぱり嬉しいのは嬉しいよ。タコちゃんだってそんなことあったら調子乗るでしょ?
僕はだって、調子乗りですもん。逆に谷川さんって、あんまりそういうのはなんとも思わないほうなのかなと思って。
谷川
いや、嬉しいのは嬉しいよ。声かけられるだけでも嬉しいもん。こないだも電車に乗ってたら、iPhoneに「格闘技好きです。これからも頑張ってください」って、いきなり書かれた画面を見せられたことがあるしね。
へぇ~。
谷川
でもやっぱり、スターって言ったら美空ひばりだよね。
まあ、そうですよね。20世紀最大のスターですからね。
谷川
うん。ホントにそう思うね。でも最近の僕はね、流行りの歌が凄い好きなの。
どうしたんですか、いきなり(笑)。
谷川
いやいや、ホントに。
流行りの歌とかは何で知るんですか?
谷川
う~~~んと、いろんな人がくれるんだよね。
気が利く人が周りにいるんですね。
谷川
そうなんだよ。だから、俺は凄い若い歌とかも知ってるの。
ほぉ!
谷川
カラオケなんか行ってもだいたいみんなが歌っている歌はわかる。世代的に石原裕次郎とかサザンとかを歌うと思われがちだけど、そうじゃないんだよ、俺の場合。
どんな曲を歌うんですか?
谷川
流行ってる歌だね。
それは観客を見て選ぶ感じですか?
谷川
いや、観客を見てっていうのはないなぁ。マイペースで自分の歌いたい曲を歌う感じで。
そこに観客論はないんですね。
谷川
観客論はない。自分の歌いたい歌を歌う。それもいま流行ってる歌が歌いたい。

目利きやTOP