- 太田さんや宗像さんと僕を一緒にするのは恐れ多いですが、やっぱりRCとの出会いは、僕らの人生に大きな影響を与えてますよね。
- 太田
- 僕の場合は、勉強や情報ではなく、自分で価値を認めて、ついて行ったことだね。
- しかも、世間的にもほとんど知られてなかったわけですからね。
- 太田
- そうだね。「ボブ・ディラン聴かなきゃダメだよ」じゃなくて、自分でその価値に気づいてのめり込んで「清志郎を聴いたらディランもちょっと弱いんじゃないか」ぐらいだった。
- わかります!
- 太田
- 僕は自分の価値観でモノを見ることの大切さに気づいたんだよね。その時までけっこうお勉強型だったから音楽でもデザインでも名作を勉強してた。RCは誰も何も言ってないけど、自分がいいと気づいて突進していった初めての体験だった。RCを聴くようになってからは物事の見方がとっても純粋になった気がする。「清志郎を見てみろ、周りに理解されなくてもこれだけ立派なことをやってる、俺だってやるんだ」っていう気になったからね。自分で発見して、自分でよさを見つけていって。結果的にRCサクセションは日本のキング・オブ・ロックと呼ばれるようになった。

- いや~、素晴らしい。ちょっと聞き入ってしまいました。最後に一つうかがいたいんですけど、清志郎が前にNHKの番組に出た時に「若い人に向かってメッセージを」って言われたんですね。「大人になるのはつまらない。みんなダメになるって思ってるでしょ? 全然そんなことはないです。大人になればドンドンおもしろくなっていきます。ドンドン楽しくなっていきます。大人は最高です」というセリフがあって、僕はその言葉を支えにしてるんですよね。
- 太田
- うん。
- それもあって僕は「大人になるっていいな」って思ってるんですけど、還暦を超えられた太田さんはどう思われますか?
- 太田
- 還暦は余計だ!(笑)。その番組は観たよ。その言葉は覚えてる。僕は嬉しかったね。初めてステージを観てから何十年経ち、清志郎がいまの自分に自信を持って、「大人はすばらしい」と言えるようになったんだと思ってなんかホッとしたよね。
- あ~~~。
- 太田
- 「ロックは反抗だ」とか「いつまでも若さを持って」とか言うけどね、反抗マインドは必要だけど、実際はロックは反抗だということをウリにした商売人ロッカーばっかりじゃないか?
- はいはい。
- 太田
- 例えば清志郎の原発反対というメッセージもそうだけど、大人の覚悟を持ってやるからね。本物の芸術家になったなぁと、たくましく感じた。売れない頃を見てるから、特にだよね。
- 清志郎が大人や世間に対して悪態をついている頃から見てるんですもんね。
- 太田
- 忌野清志郎という大きな名前の大人になった上で「原発なんていらない」って歌うのは、そのへんの小僧が叫んでるのとはわけが違うからね。志が違うし、人間の深さも違う。今日は色々音楽の話をしてきたけど、結局それが本当のロックンロールだと思うな。
- いやあ、今日は改めて忌野清志郎という人のすばらしさを再確認しましたし、昔からお会いしたかった太田さんに取材できて感激しました。今日は長々とありがとうございました!
- 太田
- いえいえ、とんでもない。役に立つかどうか(笑)。これ、まとめるの大変でしょ? もう一杯お茶飲んでけよ(笑)。
- いただきます!ではもうちょっとだけ清志郎のこぼれ話を聞かせてもらおうっと(笑)。
(聞き手・メディアプルポ音楽出版部プロデューサー 原一博 構成/阿修羅チョロ)