番外編
谷川貞治さん

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永ちゃんと井上陽水。
谷川
永ちゃんも好きだった。俺はね、中学校の時に部屋にポスター貼ってたのは、いまでも覚えてるんだけど、アントニオ猪木、それにブルースリー……。
(遮って)ちょっと、それ、僕らに合わせてません?(笑)。
谷川
いやいや、ホントに貼ってたんだから! 猪木さんがファイティングポーズ取ってるヤツとか、いまでも覚えてるもん。それとブルースリー、ジェームス・ディーン、矢沢永吉……。
メッチャわかりやすいじゃないですか(笑)。
谷川
(無視して)あとはショーケン、松田優作とか。
カッコいい人のベスト盤みたいなラインナップですよね(笑)。
谷川
そう、ベスト盤(笑)。キャロルなんかは不良に憧れた人たちが神格化してたからね。

Disc 02

『ザ★ベスト』
キャロル

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そうですよね。
谷川
キャロルの解散コンサートのレコードなんか、もう何回聴いたか!
へぇ~~~~。
谷川
ここで誰々を紹介するとか、岩城滉一が出てくるとか全部覚えてるもん。友だちは観に行ったんだよなぁ、わざわざ。
谷川さんは行かなかった?
谷川
行かなかった。
怖かったんですよね?キャロルのライブの雰囲気って。
谷川
そうそう。そういうイメージがあった。
谷川さんの中に不良とかヤンキーの要素ってあるんですか?
谷川
あのね、周りにそういうヤツが多かったの、時代的にもね。だって、ブラックエンペラーのワッペンとか凄く売れる時代だもん。
いままで余り語られなかった谷川さんの不良伝説とかあるんですか?
谷川
あるある!
ホンマですか!?(笑)。
谷川
僕、中学生の時、生徒会長やってたんだけど、隣の中学校とさ、大幅なケンカになったことがあるの。
大幅なケンカ(笑)。
谷川
いやいや、ホントに。向こうが100人くらい出てくるって騒ぎになっちゃってさ。
それは大幅だ!
谷川
みんなで「やるぞ!」ってことになって、僕も誘われたんで行かなきゃいけなくなったんだわ。
ほぉ!
谷川
(低いトーンで)その時はマジメな話、死を覚悟したね。
ダハハハハハハハ!
谷川
どういう服を着ていったらいいかとか友だちと話して、「少年ジャンプを腹巻きの中に入れていった方がいい」とか決めてたからね。
刺されてもいいように(笑)。
谷川
そうそうそう!「武器は持ってった方がいいか」とか、いろんな葛藤があってさ。
ドキドキしますねぇ!
谷川
で、そういう話があって、俺も行こうとして……っていうか行ったんだよ。
おお、出陣や!
谷川
いやね、行ったはいいけど、場所間違えちゃってさ(笑)。
ダハハハハハ!
谷川
しかも俺らの一団ごと(笑)。
ダハハハハハハハハハハ!
谷川
俺が公園の名前を間違えちゃってさぁ(笑)。何々公園っていうのを聞き間違えたかなんかで辿りつけなかったんだよ。それが唯一の不良伝説(笑)。
谷川さん、面白すぎます!(笑)。
谷川
行ったヤツは次の日に生徒指導室に呼ばれてね。結局2~3人が殴り合っただけだったみたいなんだけど。
まあでも、当時から谷川さんはガタイもよかったでしょうし。
谷川
おっきかったし、周りから頼りにもされてたんで。
そうでしょうね。
谷川
やっぱり男として引いちゃいけないって思ってたしね。でも怖かった。
怖いのは怖かったと?
谷川
すんごい怖い! 死ぬんじゃないかと思った。
ダハハハハハ!
谷川
でもさ、当時は隣の学区なんて行ったことなかったからさ。だから、道も知らないし、それで迷っちゃったんだよね(笑)。それでまたさぁ、気持ち的には「行きたくない」っていうのもあったから、ゆっくり歩いてたんだよね(笑)。それが唯一の不良伝説かな。でも、割と友だちは幅広かったんだよね。
あ、そうなんですか。
谷川
面白いヤツだったら、不良とか頭のいい子とか暗い子とか明るい子とか、僕はそういうのあんまり気にしなかったんで。
いまでも気にしませんよね。
谷川
そうだね。だから、不良の人たちもお兄ちゃんみたいな感覚でいろいろと教えてくれるのよ。なんか「お前はアイパーをかけろ」みたいなね(笑)。
あえていま、そのアドバイスにのってほしいですよ!
谷川
どこに行けばボンタンが売ってるか、とかね。
はいはい。
谷川
でも、音楽の話に戻すと、井上陽水とか吉田拓郎とか小椋桂とか、わけのわからない文学的な曲もよく聴いてたね。

Disc 03

『GOLDEN BEST』
井上陽水

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最近もツイッターで「傘がない」ってつぶやいてましたよね。
谷川
そうそう、「傘がない」ね。
そういった文学的な歌詞とかも好きだったと?
谷川
どっちかというと、そっちの方が好きだったね。意味がわからない歌詞の方が。
「♪キミはファンキーモンキーベイベー」よりも?(笑)。
谷川
そうそう。小椋桂とかもよく聴いてたもん。布施明が歌った「シクラメンのかほり」とか。小椋桂が作詞作曲なんだけど、「真綿色したシクラメンほど清しいものはない」とか不思議な歌詞じゃない?
そうですよね。
谷川
あと、小椋桂でいうと「真っ白な陶磁器を眺めては飽きもせず かといって触れもせず」みたいな。
どないやねん!っていう(笑)。
谷川
で、なんか知らないけど、沢木耕太郎かなんかの本を見たら小椋佳のお母さんは霊媒師なんだって。
へぇ~、そうなんですか。
谷川
本人は当時の日本勧業銀行、いまのみずほ銀行に勤めてた東大出のエリートかなんかでしょ。
そうなんですよね。
谷川
そういう人の歌を好んで聴いてたんだよ。一方で海外の人の歌っていうのも中学ぐらいで聴くようになるんだよね。その頃だからビートルズとかだよね。あとクイーンとか。で、向こうの歌で英語を覚えるのが多かったね。あとはオリビア・ニュートンジョンとかね。ベイシティ・ローラーズなんかも聴いてたよ。
谷川さんの話を聞いてると、そのとき流行ってたものが全部わかりますね(笑)。
谷川
そうそう。そういうものを聴いてた。
人生ベスト盤(笑)。
谷川
たぶんベストを聴いてたと思う。でも、何回も聴いてたね。それが中学生時代。で、高校になると、サザン(オールスターズ)が出てくるの。まあ、サザンはホントに直撃世代だからね。桑田佳祐も英語で歌ってんだか日本語で歌ってんだか、よくわからないんだけど、でも、バラードとかは凄い曲がいいでしょ。

Disc 04

『バラッド '77~'82』
サザンオールスターズ

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その頃だと「いとしのエリー」ですね。サザンは最初出てきた時はコミックバンドですからね。
谷川
そうなんだよね。明治大学だっけ?
青学です。
谷川
あ、青学か。
村松友視(「視」の字は「示」の右に「見」)さんなんかも桑田さんのこと書いてましたからね。
谷川
書いてた書いてた。「いとしのエリー」がどうとか……。
念のためお聞きしますけど、村松さんって読んだことあります?(疑いの眼差しで)。
谷川
あるある!
そこ大事なとこですよ!
谷川
いやいや、ホントにあるって。俺なんかも「凄いのが出てきたな」って思ったもん。桑田佳祐は凄いと思った。
その時から見抜いてたんですね(笑)。
谷川
うん、俺と村松さんは見抜いてた。
ダハハハハハ!
谷川
でも、その頃、付き合ってたっていうか、好きだった女の子はRC(サクセション)ばっかり聴いてたの。
お~~!
谷川
もうRCばっか聴いてたから。子供ばんどとかシーナ&ザ・ロケッツも聴いてたかな。
はいはい、わりとロック系が好きな女の子だったんですね。
谷川
とにかく「RCはいい」ってずっと言われてて、僕も聴くようになったの。

Disc 05

『THE RC SUCCESSION BEST ALBUM WONDERFUL DAYS 1970-80』
RCサクセション

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RCで一番好きな曲はなんですか?
谷川
「スローバラード」が一番好きかなぁ。
ベタや(笑)。でも名曲ですよね。
谷川
大学入った時に、アメフト部だったんだけど、部員にもRCというか清志郎ファンが多かったんだよ。
へぇ~、そうなんですか。
谷川
練習終わると、一年生だから先輩の服とかを洗濯しなきゃならないんだよ。その時に友だちがずっと「スローバラード」をかけてたんだよね(笑)。
ダハハハハハ!
谷川
「ツライなぁ」とか言いながら(笑)。もう、ず~~~っと「スローバラード」聴いてたからね。
でも、そんな部活のあとみたいなシチュエーションで聴くような曲じゃないですけどね(笑)。
谷川
いや、でもなんか外で夜空の下が似合うイメージが凄くあるんだよね。
それは確かに。
谷川
それを俺は洗濯しながら聴いてたの。
「毛布に包まって」ではなくて?
谷川
毛布を洗いながらだったけどね(笑)。でも、「スローバラード」は印象に残ってる。さっきも言ったけど、当時付き合ってた彼女も好きだったし。
彼女はロックとかサブカル系が好きな子だったんですかね。
谷川
そうそう。だから、RCはサザンよりもちょっと進んでる気がしたんだよね。
あ、それはわかります。
谷川
僕はサザンどまりだったんだけど。やっぱりさ、志向がメジャーだからさ。
糸井(重里)さんが当時、清志郎をいいと言ってたのはいまいちわからなかったですか?
谷川
当時もわからないまま、いまも通り過ぎてるというか(笑)。
ダハハハハハ!でも、谷川さんがお付き合いされるような女性がそういったカルチャーに敏感だってイメージはないですね。なんかぼんやりした人の方がしっくり来るというか(笑)。
谷川
いやいやいや、それが意外とそうでもないんだよ。俺、あんまり女の子の話とかしないんだけど。
では今日は特別ということでお願いします!
谷川
その子は高校2年生ぐらいの時に初めてお付き合いした女性でね。付き合ってからRCが好きだって知ったんだけど、最初、この子は凄くいいなぁって思ったのが、『クイズ・タイムショック』ってあったじゃない?
はい。ありましたね。
谷川
ホームルームの時にやることがなくて、毎回いろんな遊びをやってたのよ。
はいはい。
谷川
討論したりもしてたんだけど、討論なんか面倒くさいから遊ぼうってことになったんだよね。
非常に谷川さんのクラスっぽいですね(笑)。
谷川
「何やろうか?」ってなって、その頃は『クイズダービー』とか『クイズタイムショック』とか凄く流行ってて、で、『タイムショック』ゲームをやることになったの。それで、教壇の上に椅子を置いて、そこに誰かが座って、違うヤツが問題を出すと。
ホームルームっぽいなぁ(笑)。
谷川
で、「クイズタイムショック!チャッチャッチャッチャッ」とか言いながらやるんだけど、その時に彼女が答える側だったの。で、誰かが「妖怪の名前を三つ言え」って言ったの。
妖怪を三つ!
谷川
その子は即座に「ベム!ベラ!ベロ!」って言ったの!!
ダハハハハハ!
谷川
スパーンと答えてさ!クラスがどよめいたよ!それを聞いて俺は「うわ、カッコいい~!」ってなってね。それでね、声をかけたんだよ。
なんちゅうきっかけや(笑)。
谷川
そうそう(笑)。「さっきのは凄い!俺はベム、ベラ、ベロは出なかった」って話をしてね。

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